氷川清話⑧
「若い時のやり損いは、大概、色欲からくる」
若年期の失敗は、恐らく色恋沙汰がそのほとんどと述べている。これは案外男女両方に通じることだろう。
「
島国の人間はどこも同じことで、その日のことより他は目につかなくて、五十年先のことはまるで暗闇同様だ。
度量が狭くって思慮に余裕がないからのことだよ」
島国人の視野の狭さ、将来推計の苦手さ、持続力の欠如を痛烈に批判している。
秋田県人にもその傾向が色濃いと思われる。
「
学問に凝り固まっている人は声ばかり大きくて肝っ玉が小さい。(そんな人物で)まさかの場合に役に立つ人はまれだよ」
胆力のある学者は現在も稀であろう。『講釈ばかり達者で、実行力がない』輩はSNS上でもよく見かける。
「自分のこれまでの経歴を顧み、これを古来の実例に照らして静かに利害損得を講究するのが一番近道だ」
講究=調べて解明する、とある。自分のやってきた事と、それに共通点のある実例を客観的に比較分析することが、事業の成功や正しい出処進退を知る近道なのである。
「
俗物は理屈詰めに世の中のことを処置しようとするから、いつも失敗のし続けで、そうして後で大騒ぎしている」
理屈ももちろん必要だが、人間社会のことは人情の機微を知らなくては(又は無視していては)とても処せるものではない。
「小理屈は誰か学者先生をとかまえて、ちょっと聞けばすぐ分る」
小理屈、とは目先の知恵とか細かなテクニックのことだろう。
「事の起こらない前から、ああしようのこうしようのと心配するほど馬鹿げた話はない」
想定して備える、というのと違い、ただ漠然と不安に駆られることの愚を説く。事が起こるということは、何らかの原因が必ずあるはずだから、冷静に分析すれば対応できる。想定外の事は起こった時にダイレクトに対応するしかないのだから、想定できないことへの心配は無駄な労力に他ならない。
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