孟子(16)
【告子 下】
「士は官を世々にする無く、官の事を摂せしむる無く、士を取るは必ず得て、専(ほしいまま)に大夫を殺すなかれ」
士は官職を世襲してはならず、(複数の)官職を一人で兼務してはならない。士を採用するにあたっては必ず適材を得なければならない。罪があっても天子の意向を聞かずに(勝手に)大夫を殺してはならない。
*これは、現代の政治家にも当てはまるのではないか?能力に拠らない世襲、兼務という名の権力集中、人材登用の際の人事眼、どれも今の政治の世界にあるような気がする。
「君の悪を長ずるは其の罪小なり。君の悪をむかうるは其の罪大なり」
(君主に過ちがあっても諫めることが出来ずに)君主の悪を増長させるのはまだ罪が小さい。過ちがない君主を過ちに導くのは大罪である。
*君主を過ちに導かないような補佐役が名補佐役なのである。佞臣は存在そのものが大罪なのであるが、過ちを正せない補佐役も自分は同罪だと思うし、名補佐役はしばしば諫臣でもある。
「天 将に大任をこの人に降(くだ)さんとするや、必ず先ず其の人志を苦しめ、其の筋骨を労せしめ、其の体膚を餓えしめ、其の身を空乏にし、行い其の為す所を払乱せしむ。心を動かし性を忍ばせ其の能わざるところを曾益せしむる所以なり」
天が人に重大な任務を与えようとする際は、必ず先ず心や志に苦しみを与え、その筋骨を疲れさせ、体を飢えさせ、窮乏に陥らせ、その行い・結果を乱させる。これはその人物の心を慎ませ、本性を堅固にし、出来ないところを改善させる為である。
*歴史に名を残すような偉業は、みなこの試練をくぐり抜けてきたということだろうか。しかし、自分を律し、初志を曲げず、努力を惜しまなければ大きな仕事を成し遂げることが出来ると言いたいのかもしれない。
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