2021年03月05日
易経(11)

漸(ぜん)
徐々に進むこと。急激な成長は望めないが、着実に順をおって進んでゆくべきという卦。
帰妹(きまい)
女が積極的になる形で、凶の卦。何一つ良い結果は得られない。女の方から悦び動いて結婚を求めるのは邪道であり、凶となる。
これは現代には当てはまらないだろう。男尊女卑思想の名残程度に捉えておこう。ただ、物事には正道と邪道があり、邪道を行うことは須らく凶事を引き起こすという警告であれば、得るところはあると思う。
豊(ほう)
この卦は全てにおいて満ち足りた状態を表す。しかしながら、窮すれば通じ、盛んなれば必ず衰えるのが易の理。逆境にあえぐものへは救いの道を示すが、盛運にあるものへは必ず警告が与えられるものだ。
このことから、物事の盛衰を思い患ってはならない。どのような状況であっても公明正大に行動すべきなのである。
旅(りょ)
人生は長い旅なのである。いたずらに焦ることなく、郷に入れば郷に従い、心の内は自己の理想を忘れずに守って進んで行け。
この境地になるのはなかなか難しいであろうが、静かな精神状態で、自己の完成形を目指して、コツコツと終わりなき努力を積み重ねてゆくのが人生なのだろう。
巽(そん)
巽の卦は風を象徴する。巽とはまた遜でもあり、遜(へりくだ)る、譲る意味でもある。
どんな人間関係の中でも、柔軟な適応性をもって入り込み、常に他者を思いやっていれば害されないものである。
また、常に優れた指導者に従うべし、ということも示唆している。
2021年03月04日
易経(10)

益(えき)
疾風迅雷が益の卦象。善行を見れば直ちに学びとり、過失があれば直ちに改める、という行動を心掛けよ。
革(かく)
革とは古いものを変えて新しいものを創り出す過程を表す。「革新」は単なる変化ではなく、そこには積極的な価値が含まれているものである。
革の卦は、「十分に時機が熟した後に行ってこそ、万民の信頼を受ける」ということを表す。
震(しん)
震とは、綺麗ごとや掛け声ばかりで肝心の内容が伴わない状態を表す。
艮(ごん)
泰然として動ぜぬ卦。沈思黙考して軽挙妄動を慎むべき時であることを示す。この卦のもとでは他への信頼心は禁物である。
独力で現在の立場や境遇を堅持することへ終始せよ。
艮=山。山は居場所を移すことがない。君子はこの卦を感じると、自分の本質的な立場に徹し、野心を抱かない。
2021年03月03日
易経(9)

明夷(めいい)
明が夷(やぶ)れるの意。賢明なるものが傷付き、害される暗示なので、この卦のときは(思慮分別のあるものは)昼行燈に徹せよ。
(明夷の状況下では)内に明智の徳を包み、外見は従順・柔和な態度で大難に処してゆけ。
暌(けい)
全て相互に矛盾する中にこそ、統一があり進歩がある。矛盾を(否定するより)活きた形で捉えることが大切である。
一見、相反するといってどちらかを否定するよりは、その矛盾さえも肯定して共に活かす視野の広さ・度量の大きさを備えよ。
蹇(けん)
行き悩み、八方塞がりの状態を指す。いたずらに進まず、物事を進めず、静かに我が身を振り返り人徳を磨いて危難の時が過ぎるのを待つべき状態にある。
ダメなときゃダメよ!てことだし、深刻・盲目的にならず雌伏の時と割り切りましょうよってこと。じっとしてる方が利がある場合もあるということか。
損(そん)
意味としては「奉仕」に近い。目先の利益を今は捨てて、遠い未来の利益を勝ち取るように努めよという卦。
損とは「下」(現在、源)を損(へら)して、「上」(未来、末端)を益(ふや)すこと。つまりは下から上への奉仕である。
2021年03月02日
易経(8)

頤(い)
頤とは「あご」のことで養うという意味。何を養うべきかよく考え、その本質を見極めてそれに応じたもの(身体なら栄養、精神なら教養)を自らの努力で求めよ。
自分に必要なものは自分で調達せよということ。ボーっとしていても時は待ってくれない。
大過(たいか)
アンバランスを意味する卦。この卦が出たときは「時宜を得る」ことが重要である。
習坎(しゅうかん)
次々に険難に陥ることを示す卦。
しかし、危難に際して、誠意を変えることがなければ、やがてはそれを乗り切って伸び栄えるものだ。
危難=試されている、と捉え、乗り越えてゆけば必ず潮目が変わって目的を達せられるものだという励ましのようだ。
2021年03月01日
易経(7)

剝(はく)
剝とは「剝ぎ落す」「削り減らす」こと。崩壊寸前の危機を表す卦である。
小人(陰)の勢いが強大となっており、このような状況では無理に事を行えば害を招く。時勢に順応し節度を守って(動き回らずに)止まるべきである。君子は、時に利・不利のあることをわきまえて行動するものだ。
いかに正しい人間であっても、多勢に無勢な場合は無理強いは禁物。上手に受け流し、流れに身を任せて時が来るのを待て、という教訓。
目的を達するためには我慢すべき時もある、腰を落ち着けておおらかに構えよという意味だろう。
復(ふく)
復は冬至を示す。これより後は春に向かうのみという上昇の卦。
この状況であれば、時勢に順応して行動することで出処進退に何ら障害はない。
无妄(むぼう)
无は無、妄は望。「こうしたい」という期待や、「予定・下心・手練手管」を捨てて成り行きのまま身を委ねること。老子の無為自然の道に近い。
无妄の卦の時は、天の摂理に身を任せ、思いがけない出来事にぶつかっても、動揺したり作為を働かせたりせずに、静かにかつ又素直にそれを受け入れることである。