2021年03月12日
易経(16)

繋辞下伝(けいじかでん) その2
『君子は足場を固めてから動き、信念を得てから語り、交際を深めてから相手に求める。』
『易という書物は事象の始源と終極とを関連的に捉えるところにその本質がある。』
『恐れ慎む心を終始貫き通すならば、全てのものが処を得て結局は咎めを免れる、というのが易の根本思想である。』
『人を裏切ろうとする者は言葉に後ろめたさが表れる。心に疑いを持つものは言葉に迷いが表れる。 徳ある者は口数が少ない。徳無き者に限って言葉を並べ立てる。 善を悪だと言いくるめようとすれば論旨に一貫性がなくなる。信念を持たぬ者は言葉遣いも卑屈である。』
付録 左伝のなかの易占例
自分と相手の心がぴったり一致することが【忠】である。
事を成すにあたって信を守るのが【恭】である。
そして、これらの徳を修めることこそ【善】である。
(易経 終わり)
次からは「資治通鑑」を解釈してゆきます。
2021年03月11日
易経(15)

繋辞下伝(けいじかでん) その1
八卦→天地万物を象徴する
六十四卦→天地万物を動的にとらえたもの
卦爻辞→変化の意味の説明
『考え方は千差万別であっても、究極の原理は一つしかない。根本原理を把握して、天地の化育に一体化する事...ここまでが人間の努力目標である。』
『身の程をわきまえないものは、必ず進退窮まって凶事に見舞われる』
『小人は不仁を恥じず、不義を畏れない。利をもって誘われなければ善行に励もうとせず、罰をもって脅さなければ悪事に懲りることもない。』
『安泰を過信していると(必ずや)危機に陥る。順境に慢心していると(知らず知らず)滅亡を招く。』
『人徳備わらないのに高位に居ること、知恵に乏しいのに大事を企てること、力量不足なのに重要な任務を請け負うこと、これら能力以上のことをすると必ず禍いが降りかかる。』
『機微とは、物事の動きのごくわずかな兆しである。そこには既に吉凶の端緒が現れているものだ。』
(繋辞下伝 その2 へ続く)
2021年03月10日
易経(14)

繫辞上伝(けいじじょうでん) その2
『易の効用:万物の真相を指し示す。人々の行動を成功へと導く。天下の道理を明らかにする。』
『易の根本は太極:陰と陽の相対の奥の、絶対的な究極的存在を太極という。』
『なぜ易に四象(老陽・少陽・老陰・少陰)があるのかと言えば、変化を示すためである。なぜ辞は必要かと言えば、未来を告げる為である。なぜ未来に吉と凶の区別を立てるかと言えば、人々の疑いに断を下すためである。』
『目に見えぬ実在(形而上)が「道」、(道が)形となって表れた現象(形而下)が「器」、現象が相互に作用して様々に変化することが「変」、変化することによって新たに発展することが「通」である。』
(繋辞下伝へつづく)
2021年03月09日
易経(13)

繫辞上伝(けいじじょうでん) その1
『あらゆる事象は全て孤立して存在するものではなく、必ず対になるものがあり、二つのものは相互に作用し合う関係において存在するのである。』
『乾(けん)の働きは永続し、坤(こん)の働きは拡大する。この永続性こそ賢人の徳性の特色であり、拡大性こそ賢人の功業の特色である。』
『事象は全て極点に達すると変化し、変化することによってまた新しく発展してゆく。これを変通と言い易の最も重要な概念の一つである。』
『易には成人の四つの道が備わっている。①言論で指導するには易の「辞」、②実践で立とうとするには易の「変」、③制度文物を整えて民を豊かにするには易の「象」、④卜筮(ぼくせい)によって予見を行うには易の「占」、を重視する』
その2へ続く。
2021年03月08日
易経(12)

兌(だ)
心楽しく和やかに暮らす事の重要さを説く卦。
正道を行くことから生ずる自然の悦びの心を終始貫くべし。
節(せつ)
節とは「限りありて止まる」という、いわゆる節度を守ることを示す。
また、いたずらに原則に固執しすぎれば、かえって行き詰って動きが取れなくなることも意味している。
何事も適度なところで納得すべきであり欲をかいてはいけない事、ルールを守るのは悪い事ではないが余りにも縛られ過ぎては自分で自分の首を絞めることになる事を示唆していると思う。
また「節の道によって国政を行うならば、財政は破綻せず民を苦しめることも無い」という暗示もあり、これを行政官は忘れてはならないと思う。
小過(しょうか)
小過とは小なる者が多すぎる状態。分裂や食い違いによって(足並みが揃わないことにより)困難に直面している時期であると示す。
こんな時には無理に大問題を解決しようと息巻くより、(自分一人でもできる)日常の事務(または任務・責務)をてきぱき片づけることが大切である。
要は、組織としての方向性が定まっていないようなとき、チームワークによらず、強引に大きな案件をこなそうとするのは無茶であり、傑出した個による一か八かの博打を戒めていると感じた。それよりは組織の中の、与えられた役割をしっかりこなす事がかえって組織のためになる事を言おうとしているのではないだろうか。
結局、一人の人間によって出来ることなどたかが知れている。「自分は優秀だ」と己惚れていたって客観的に見れば個人間に能力差など存在しない。組織として動くことの重要さを説く、味わい深い言葉である。
(六十四卦 終了)