2021年10月12日
大学・中庸(30)

【中庸-19】
「君子は動かずして敬し、言わずして信あり。」
君子は未だ行動せずとも敬い慎み、未だ発言せずとも信義を守っている。
*立派な人物というのは常態的に天を敬い慎み深いし、発言しようとしまいと、信義を固く守ることが出来る。
「声色を以って民を化するにおけるは末なり。」
声(を荒げたり)や顔色(を険しくしたり)によって民衆を(無理矢理)教化するのは下の下策である。
*権力者の強制によって民衆を従わせようとすることの非道を説いている。権力者(為政者)は中庸を身に付けた人格者でなければならない。
(大学・中庸 終わり)
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13:25
│大学・中庸(ビギナーズクラシックス)
2021年10月11日
大学・中庸(29)

【中庸-18】
*「中」とは喜怒哀楽の未だ発しない、偏りなく真っ直ぐに安定した様子を指すが、この「中」のニュートラルな立場を根本に据えることで様々な事態に対して常に道理にかなった対応がとれるようになると、中庸ではしばしば述べられている。
「君子の道は閣然(あんぜん)として日にあきらかに、小人の道は的然として日に亡(ほろ)ぶ。」
君子の在り方(道)は、(自己修養に重きを置くため)目立たぬようにしていても日に日に明らかになってゆき、必ず人目に付くものだ。一方、小人の在り方は(名声・利益が目的の為に)最初は目立っていても日に日に目立たなくなってやがては消え去ってしまうものである。
*君子は自己修養の為に学ぶが、小人は名利目的で学ぶ。そこに大きな違いがある。
「君子は内に省みてやましからず、志ににくむこと無し。君子の及ぶべからざる所の者は、其れ唯だ人の見ざるところか。」
君子は心にやましい事がなく、また羞じ憎むことが無い。普通の人が君子に及びもつかないところは、ただ他人が見ていないところ(でも、正しい行動をとる)であろう。
*つまり、人目の有無にかかわらず常に道理にかなった行動をとる自己規律の厳格さを基準に君子か凡人かが分かれる。
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14:21
│大学・中庸(ビギナーズクラシックス)
2021年10月08日
大学・中庸(28)

【中庸-17】
「曲なればよく誠あり」
小さな善を一つ一つ推し極めてゆけば、自身を誠実にすることが出来る。
「誠は自ずから成るなり。而(しか)して道は自らみちびくなり。」
誠というものは(元々)自ずと完成しているものである。一方、道というものは自ら(自然に誠へと)導くものである。
*道:人が行うべき行動・規範をいうらしい。
「故に上に居て驕らず、下と為りてそむかず。国に道有ればその言、以って興るに足り、国に道無ければ、其の黙以って容るるに足る。」
君子は上位にあっても下位の者に驕り侮らず、下位にあっても上位の者に背かない。国に道義が行われていれば身を立てて出世できるほどの発言をし、国に道義が行われていなければ身を安全に保って危害を免れるように沈黙する。
*人格者は常に公正な態度を貫き、機を明敏に窺って出処進退を誤らないということ。
*隠遁者(時代の傍観者)の心得としても当てはまる。
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14:44
│大学・中庸(ビギナーズクラシックス)
2021年10月07日
大学・中庸(27)

【中庸-16】
「ひろく之を学び、つまびらかに之を問い、慎んで之を思い、明らかに之を弁じ、篤く之を行う。人、一たびして之を能くすれば、己、之を百たびす。人、十たびして之を能くすれば、己、之を千たびす。果たして此の道を能くすれば、愚なりといえども必ず明に、柔なりといえども必ず強なり。」
(誠であろうとする者は)広く学び、詳細に質問し、慎重に思考し、明確に分別し、周到に行う。他人が一度で出来るなら自分はそれを百回行う。他人が十回で出来るなら自分はそれを千回行う。この方法を遂行できたなら、愚かなものでも必ず善に明らかな知者となり、軟弱な者でも必ず善を遵守して怠らない強者となれるだろう。
*学問とは「学ぶ」「問う」「思う」「弁ず」「行う」から成ると述べているのが冒頭部分。
*普通の人が一度で達成して満足するところを百度も達成し、普通の人が十回目で成功して納得するところを千回も反復する(つまり百回成功)くらいの念の入り様でなければ、なかなか物事に精通しないということではないだろうか。
「誠なるよりして明らかなる、之を性という。明らかなるよりして誠なる、之を教えという。」
誠(本来のままにして偽りのない在り方)であることによって自ずと善を明らかに知っているのを性(天道)という。学びによって善を明らかに知り、それによって自身を誠にしてゆくことを教え(人道)という。
*要は善を明らかに知ることが誠へ到達する方法であるということ。ある意味、前者は天賦の才、後者は努力の才ともいえよう。
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14:00
│大学・中庸(ビギナーズクラシックス)
2021年10月06日
大学・中庸(26)

【中庸-15】
「凡そ事、予めすれば則ち立ち、予めせざれば則ち廃す。」
およそ五達道・三達徳・九経などどんな物事も前もって(誠の立場が)確定していれば成功するが、逆にそれが確定していなければ失敗する。
*五達道・三達徳・九経などの根本にあるのが善を明らかにし、身を誠にすることと論じている。
*身を誠にするとは、行為において心に不純さを入り込ませずに真心で充実させることをいう。
「誠は天の道なり。之を誠にするは人の道なり。之を誠にする者は、善を択びて固くこれを執る者なり。」
誠とは天(物事本来)の在り方である。誠であろうと努めることは人としての(本質的な)在り方である。誠であろうと努める者は、善を選択してそれをしっかりと遵守する者である。
*天地自然の摂理・道理の『本来の在り方』『ありのままの偽りのない在り方』が、すなわち誠である。
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09:57
│大学・中庸(ビギナーズクラシックス)