2021年12月10日
菜根譚(20)

「人目につかない所でこそ過ちを犯さない」
誰も見ていないからといって人として誤った行動をすると、やがてそれが露見し批判にさらされることになる。
*秘めた悪事はいずれは露見するもの。もし露見しなくても罪悪感は消えない。
「成果が見えなくても続ける」
今は目に見える形で成果が出ていなくても、気が付かない所できちんと実を結んでいるものである。悪行で得たものというのは、雪のようにたちまち消えてしまうものである。
*正しく努力したことは必ずどこかで役に立つし、その成果は消えることは無い。しかし、悪事によって得られるものは大本が無いものだから消残らない。
「欲望に惑わされない」
人間はとかく欲望や感情に心を惑わされてしまい、自分の身の回りに楽しみや幸せが潜んでいることに気づかない。
*欲望や感情からくる驕奢な心のままでは、ささやかで味わいの深い幸せに気付くことは出来ない。
「やる気を持つ」
人はやる気さえあれば進歩するものである。
*そして、やる気を起こすのに遅すぎるということは無い。
「無欲に徹する」
無欲な人は自ら幸せを求めようとはしないが、いつの間にか幸福な人生を歩んでいるものだ。天の働きの前では人間の知恵など何にもならない。
*ありのままで生きることが最良の人生である。小細工を労したり、小賢しい知恵を絞って地位や財を手に入れようとしても、無駄なあがきである。天の前には全てお見通しなのだ。
(菜根譚 終わり 次回からは【論語】を読み解いていきます)
2021年12月09日
菜根譚(19)

「よく考えて判断する」
気分や思い付きで物事を始めてしまうと迷いが生じ長続きしない。直感やひらめきで物事の是非を論じてしまうと一貫した信念を保つことが出来なくなる。
*人間の直感やひらめきは意外とバイアスがかかっているもの、客観性に乏しく間違っていることも多いので妄信してはいけない。
「清らかで正しい心を守り続ける」
都会で悪賢い商売人の仲間になるくらいなら、清らかで正しい心を持ち続け、貧しく粗野で純真な方がよい。
「相手をよく見て心を許す」
口数が少なく中々本心を見せないような人に自分の本心を打ち明けてはならない。感情の起伏が激しく、自分だけ正しいと思っているような人には話しかけない方がよい。
「嫌われることを恐れない」
上手に世を渡る為には、世間と全く接点を持たないのはよくないことと知るべきである。
*人付き合いが苦手な者、ひきこもりの者であっても、世間知らずではいけないということである。
「高い目標を持つ」
自分を向上させたいならば、人より少し高い目標を設定して日々精進を怠らないようにするべきである。生きてゆくためには、相手に一歩譲り少し遅れるくらいが丁度良い。
*目標達成のためには絶え間ない努力が必要ではあるが、そのペースはマイペースを貫くことが肝要である。
2021年12月08日
菜根譚(18)

「心の持ち方を変えて幸福になる」
幸か不幸かは心の持ちようで決まる。欲望や執着心にとらわれないよう、慎重に生きていきたいものだ。
「自然の美しさに目を向ける」
目先の損得にとらわれ、自然の美しさに目を向けることもせずに世間の汚さを嘆く者がいる。しかし、この世は汚れてもいないし苦しいことばかりでもない。そうさせているのは自分自身の心なのだ。
*心が曇っていれば世間は汚れて見えるし、心に光がさしていれば綺麗に見えるものである。
「分不相応の幸運に気を付ける」
人間は幸運に巡り合ったり、予想以上の結果が得られた時ほど、それが分不相応かどうか冷静に判断して対処しなければならない。
*僥倖をただただ喜んでいるばかりではいけない。本当ならば、実力・能力に裏打ちされない成果ほど弱い立場の者にそっくり与えるべきだと思う。
「馬鹿にされても怒らない」
人生経験を積み重ねてゆくと、人の心の移ろいが気にもならなくなってゆく。人情の機微を知り尽くしてしまえば、たとえ馬鹿にされても腹が立たなくなる。人生の達人は常に自然体の生き方が出来る。
「勤勉と倹約の真の意味を知る」
勤勉とは本来、道徳の実践に励むという意味であり、倹約とは本来、お金に無関心という意味である。人間性に磨きをかけるために日々実践すべきことは勤勉である。
2021年12月07日
菜根譚(17)

「名声を求める人間に気を付ける」
名声を求める者は信念や志を隠れ蓑にして裏で悪行を為すため、人目につきにくく計り知れない弊害をもたらす。
*売名に奔る下心が見えたら、警戒心を持ってその人物とは接する必要がある。
「常に無心でいる」
どんなに素晴らしい名誉や莫大な財産があってもいずれは無くなるものだ。栄光や幸福で満たされることを求めても無駄なこと、常に無心でいることを心掛けよ。
*人は必ず死ぬ。名誉や財産はあの世へ持っていくことは出来ない。だから、何にも執着しない無心の状態が最も人間らしいのだ。
「満たされた生活の中に不幸があることを知る」
人は満たされた生活の中で生まれる不安や悩みの方が深刻だという事実になかなか気づかない。
*物質的・精神的に満たされた状態にあってもなお生じる悩みや不安というのは、原因が根深いことから解消が難しいと言える。
「楽しい気持ちで暮らす」
常に楽しみ喜ぶ気持ちを持って暮らす事は幸せを呼び込む秘訣である。不幸は避けたいと思っても避けられるものではない。常に他人に思いやりの心を持って接することが不幸を避ける秘訣である。
「真の幸福を目指す」
苦楽の末、自分を高めて手に入れた幸福は本物である。全方向から考え抜いて得られた知識は本物である。
*手に入れるべく努力して得たものは絶対的に自分の血肉となる。
2021年12月06日
菜根譚(16)

「多くのことをしようとしない」
心穏やかであるには何か事を始めるよりも事を減らした方がよい。自分の本質に迫るなら、一つの事に打ち込むとよい。
*二兎を追う者は一兎も得ず。人間、あれもこれもと成し遂げられるほど能力も時間も多くは与えられていない。出来ることをじっくりやる方が成果も上がるし、精神的安定も得られる。
「上手くいかない時こそ、力を蓄える」
不遇な時こそしっかりと力を蓄えておけばやがて上手くゆく。この道理を理解していれば投げやりにならず焦ることも無くなる。
*不遇の時期を後の人生にしっかり生かすには、どのように過ごすかにかかっている。嘆いてばかりでは何の役にも立たない。
「目の前のことを淡々と片付ける」
過去にとらわれず未来を悩まない。目の前で起きていることを淡々と片付けてゆく。このような生き方を心掛けていれば自然と無心の境地に入ってゆくものだ。
*出た賽の目を楽しみなさいということ。課題を淡々とこなしてゆき、一喜一憂しない生き方は優雅で穏やかである。
「人に知られず善行をする」
善いことをしてもそれが他人に知られることを期待しているなら、それは偽善にすぎない。
*見返りを求める心があるうちは、善行に見せかけた偽善なのである。「善行をした」、という心の充足があればそれで充分である。
「理屈っぽい人間を無理に変えようとしない」
理屈ばかり言って我を押し通す人間は教育の仕様がない。道徳心が無く心がひねくれた人間は直しようがない。
*聞く耳を持たない者、僻み心の強い者は救いようがない。こういった人間には近付かないに限るし、関わりを持っても時間の無駄である。