2021年10月05日
大学・中庸(25)

【中庸-14】
「凡そ天下国家をおさむるに九経有り。曰く、身を修むるなり、賢を尊ぶなり、親(しん)を親しむなり、大臣を敬するなり、群臣を体(たい)するなり、庶民を子とするなり、百工を来(きた)すなり、遠人を柔らぐるなり、諸侯を懐くるなり。凡そ天下をおさむるに九経有り。之を行う所以の者は一なり。」
国を治めるには九つの不変の法則がある。①自分の身を修めること、②賢者を尊重すること、③親族を親愛すること、④重臣を敬うこと、⑤臣下の身になって思いやること、⑥民衆を慈しむこと、⑦種々の職人(技術者集団)を呼び寄せること、⑧遠方からの旅行者・行商人を労わること、⑨諸侯(各地の有力者)を心服させること、である。
全て天下や国家を治めるには則るべき九つの不変の原則がある。しかしそれを実践する拠りどころは一つ(すなわち誠)である。
*①は人格を磨くこと、②は人材登用・専門家へのリスペクト、③は縁者の団結、④は補佐役を信頼し要職を与えること、⑤は臣下への忠誠心の植え付け、⑥は愛国心の植え付け、⑦は富国・経済の発展、⑧は国際交流の隆盛、⑨は政権や為政者の求心力、と解釈すると現代にも通じる。
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14:56
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2021年10月04日
大学・中庸(24)

【中庸-13】
「知仁勇の三者は天下の達徳なり。之を行う所以の者は一なり」
知・仁・勇の三つは世に広く行き渡っている徳(三達徳)であり、これをはたらかせるものはただ一つ、誠のみである。
*三達徳:本性に基づく人格的な能力である、知・仁・勇を指す。
*五達道:時代や場所を問わず、世界に行き渡っている五つの道(人としての道)。具体的には、君臣・父子・夫婦・兄弟姉妹・朋友という五つのあるべき人間関係を言う。
修身の方法として「五達道」「三達徳」がある。五達道を実行するためには、①人の道の大切さを知り、②人の道を主体的に行い、③志を曲げずに成し遂げる、という三つの能力を要すが、①の認識力が「知」、②の実行力が「仁」、③の意志力が「勇」、である。すなわち、社会人として自立するにはあるべき人間関係の確立が必要であり、認識力・実行力・意志力が不可欠ということであろう。
「学を好むは知に近く、つとめて行うは仁に近く、恥を知るは勇に近し」
学問を好むことは知の徳に近く、努力を怠らないことは仁の徳に近く、恥を知ることは勇の徳に近い。
*学問を好む、努力する、恥を知る、の三つが分かれば、自然に身の修め方も分かってくる。
*未熟なレベルからでも、『自分の可能性を信じて努力を続ければ』三達徳に到達して我が身を修め、ひいては天下国家をも治める能力を身に付けるのも可能である。
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14:19
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2021年10月01日
大学・中庸(23)

【中庸-12】
我が身を修めるには仁の徳(親愛の情)により、賢者を採用するには義の徳(社会規範に沿った正義)により行う。
仁と義とを、礼により社会的で文化的な調和のある秩序に作り上げなければならない。
人間は天地自然の道理・摂理からは独立しては存在し得ない。人間らしく生きるとは、「天から与えられた善なる本性」を確信し、それを完全に発揮することである。人間の務めとは自分に備わった善き本性を発揮することと自覚することが、すなわち「天の命を知る」ということである。
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13:20
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2021年09月30日
大学・中庸(22)

【中庸-11】
「仁は人なり。義は宜(ぎ)なり。君子は以て身を修めざるべからず」
仁(の意味)とは人間らしさである。義(の意味)とはほどよさである。(これらを念頭に)君子は自分自身の身を修めなければならない。
*仁君となって仁政を行う為に、君主は我が身を修め、優れた人材を採用することが求められる。仁義とは「人間らしさ」と「バランスのよさ」とを併せ持つ状態のことであろうか。
2021年09月29日
大学・中庸(21)

【中庸-10】
「君子の道は、たとえば遠きに行くに必ず近きよりするが如く、たとえば高きに登るに必ず低きよりするが如し」
君子の行うべき道は、例えて言うなら遠くへ至るにも必ず近くから始め、高い所へ至るにも必ず低い所から始める、というようなものである。
*いきなり飛躍できる方法などあるわけがなく、まずは足元・目の前から理想までをコツコツ積み重ねてゆくほかはない。たゆまぬ努力とその日常性が理想の境地への道に他ならないのだ。
「政を為すは人に在り、人を取るは身を以てし、身を修むるは道を以てし、道を修むるは仁を以ってす」
政治の要は優れた人材を得ることに有り、人材を得るためには為政者の人格にかかっている。人格を磨くには人の道に基づいた実践によるほかはなく、人の道を修めるには仁徳(思いやり)に基づいた行動・思想によるのである。
*逆に言えば、為政者は仁徳の考え方・行動で人の道を修め、人格を絶えず磨き続けることで優れた人材を得ることが出来、評価される政治を行うことが出来るということである。
Posted by godman at
13:29
│大学・中庸(ビギナーズクラシックス)